新生代の幕開け - 古第三紀(Paleogene)がつくった「哺乳類の世界」
はじめに
古第三紀は、恐竜の時代が終わった直後から始まる、新生代最初の時代です。 この時代の本質は「回復」ではなく、地球システムと生物相が完全に作り替えられた時代である点にあります。 白亜紀末の大量絶滅(K–Pg境界)は終点ではなく、古第三紀はその必然的な帰結として現れました。
🌍 古第三紀の基本情報
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時代区分:新生代・古第三紀
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年代:約 6600万年前〜2300万年前
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下位区分:
- 暁新世(Paleocene)
- 始新世(Eocene)
- 漸新世(Oligocene)
| 和名 | 読み | 英名 | 年代 |
|---|---|---|---|
| 暁新世 | ぎょうしんせい | Paleocene | 6600万〜5600万年前 |
| 始新世 | ししんせい | Eocene | 5600万〜3390万年前 |
| 漸新世 | ぜんしんせい | Oligocene | 3390万〜2300万年前 |
古第三紀・新第三紀という区分は、かつての「第三紀」を後から分割したもの。生物相の質的変化が決定的だったため、現在は独立した「紀」として扱われている。
☄️ 出発点:K–Pg境界の「空白」
白亜紀末の大量絶滅で、
- 非鳥類型恐竜
- 多くの海洋プランクトン
- 大型爬虫類の大半
が姿を消しました。
その結果、地球上には
- 巨大陸上動物の不在
- 生態的ニッチの大量空席
- 捕食・被食関係のリセット
という、**進化史上まれな「空白期間」**が生まれます。
この「空白」こそが、哺乳類・鳥類・被子植物が主役に躍り出る最大の要因となった。
🐭 暁新世:恐竜後の静かな立ち上がり
暁新世は、しばしば「地味」と言われますが、本質は重要です。
特徴
- 哺乳類はまだ小型(ネズミ〜タヌキ程度)
- 熱帯〜亜熱帯が地球全体に広がる
- 森林が地表を覆う
ここではまだ「覇者」はいません。 しかし、進化の分岐点となる系統が一斉に芽吹いた時代でもあります。
暁新世の哺乳類は「小さいが多様」。この多様性が次の爆発的進化の下地になる。
🔥 始新世:温暖化と哺乳類大放散
古第三紀最大の見せ場が始新世です。
PETM(始新世温暖化極大)
- 急激な温暖化(数千年規模)
- 大量の炭素放出(メタンなどが有力)
- 海洋酸性化と生物相の変化
この温暖化イベントは「自然現象」だが、変化速度の点で現代の温暖化と比較されることが多い。
生物進化の爆発
- 馬・クジラ・霊長類の祖先が出現
- 哺乳類の大型化
- 鳥類の生態的多様化
この時代に、現代動物の「設計図」がほぼ出揃う。
❄️ 漸新世:寒冷化と選別の時代
始新世の温暖な楽園は永遠ではありませんでした。
地球環境の変化
- 南極大陸が孤立
- 南極周極流の形成
- 南極氷床の誕生
これにより、地球は
- 温室型 → 氷室型 へと大きく舵を切ります。
漸新世以降、地球は基本的に「寒冷化トレンド」に入る。
生物への影響
- 温暖適応型の哺乳類が衰退
- 開けた環境に強い系統が台頭
- 現代的な生態系構造の原型が成立
「適応できたものが残る」という自然選択が、最もはっきり現れた時代の一つ。
🧠 古第三紀の本質的な意味
古第三紀は単なる「恐竜後」ではない。
- 生態系の再設計
- 哺乳類中心社会への移行
- 気候と進化の密接な連動
もし古第三紀がなければ、人類の系統そのものが存在しなかった可能性が高い。
🔗 次につながるもの
古第三紀で準備された要素:
- 寒冷化に耐える哺乳類
- 草原化の前提条件
- 霊長類の基盤
これらが次の 新第三紀 で一気に展開する。
まとめ
- 古第三紀は「回復」ではなく「創造」の時代
- 哺乳類が主役になる必然がすべて揃った
- 現代世界の原型は、すでにこの時代にあった