石炭紀 - 森が地球を変えた時代
🌱 はじめに
石炭紀(Carboniferous, 約3億5900万〜2億9900万年前)は、古生代後半に位置する地質時代で、地球史上最大級の炭素固定イベントが起きた時代です。 本記事では、
- 石炭紀の基本的な特徴
- なぜ直前のデボン紀から「独立した時代」として区切られるのか を中心に整理します。
🪨 石炭紀の基本情報
-
時代区分:古生代後期
-
期間:約6000万年
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下位区分:
- ミシシッピ世(前期石炭紀)
- ペンシルベニア世(後期石炭紀)
「Carboniferous(石炭を生む)」という名前自体が、この時代の本質を表している。
教科書や一般書で「ミシシッピ紀」「ペンシルベニア紀」と書かれていても、概念的には誤解ではないが、階層としては「世」。
---🌳 石炭紀の最大の特徴:巨大森林の成立
🌲 維管束植物の“完成形”が地球を覆う
デボン紀で登場した維管束植物は、石炭紀に入ると一気にスケールアップします。
- 巨大なシダ植物
- リコポディウム類(ヒカゲノカズラの仲間)
- トクサ類
- 初期の裸子植物
これらが湿地帯に巨大な森林を形成しました。
石炭紀は「陸上生態系が本格的に三次元化した時代」と言える。
🧱 なぜ石炭が大量にできたのか
🪵 分解されない木が溜まり続けた
石炭紀最大の謎であり特徴はこれです。
- 木質(リグニン)を分解できる微生物がまだ存在しない
- 倒木や枯死植物が分解されず湿地に埋没
- 地殻変動で圧縮・変成 → 石炭化
白色腐朽菌(リグニン分解菌)が本格的に現れるのは、もっと後の時代。
❄️ 大気変動:CO₂減少と寒冷化
🌍 炭素循環が一気に偏った
- 森林が大量のCO₂を固定
- 炭素が地中(石炭)に隔離
- 大気中CO₂濃度が低下
- 寒冷化・氷期の発生
この寒冷化は「植物の成功が地球環境を変えた」代表例。
🫁 酸素濃度の異常な上昇
-
酸素濃度:最大で約30〜35%(現在は約21%)
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結果:
- 巨大昆虫(翼長70cm級のトンボ類)
- 節足動物の巨大化
高酸素環境では山火事が起きやすく、生態系は不安定でもあった。
🦎 動物界の進展:陸上脊椎動物の本格化
🥚 羊膜卵の登場
- 両生類 → 水辺依存
- 石炭紀後期:羊膜卵を持つ爬虫類が出現
- 完全な陸上生活が可能に
「陸上で完結する一生」が初めて実現した時代。
🔪 なぜデボン紀と石炭紀は分けられるのか
結論から言うと:地球システムが別物になったから
デボン紀の本質
- キーワード:革新
- 魚類の進化
- 維管束植物の登場
- 陸上進出の開始
石炭紀の本質
- キーワード:固定・蓄積
- 森林の爆発的拡大
- 炭素の地中隔離
- 大気組成の激変
- 気候システムの再編
デボン紀は「始まりの時代」、石炭紀は「結果が地球を変えた時代」。
⏮️⏭️ミシシッピ世とペンシルバニア世の違い
- ミシシッピ世(前期)は「海中心の石炭紀」
- ペンシルベニア世(後期)は「陸上生態系が暴走した石炭紀」
① 環境の主役が違う
前期石炭紀(ミシシッピ世)
- 海成層が卓越
- 石灰岩が大量に堆積
- 浅海にウミユリ・腕足類・サンゴが繁栄
→ 古生代的な「海の世界」がまだ支配的
後期石炭紀(ペンシルベニア世)
- 大陸内部に広大な湿地
- 陸成層・石炭層が卓越
- 巨大森林が連続的に発達
→ 地球の主戦場が完全に陸へ移行
② 石炭が「でき始めた」のと「本気でできた」の差
前期
- 植物は増えている
- 石炭はまだ局所的
- 炭素固定は進行中だが限定的
後期
- 超巨大湿地林が大陸規模で展開
- 分解されない植物遺骸が大量埋没
- 現在採掘される石炭の大半はこの時代
「石炭紀らしさ」は実質的に後期で完成する。
③ 大気・気候の段階が違う
前期
- CO₂低下が進行中
- 気候は比較的温暖・安定
- 氷期の兆候はあるが限定的
後期
- CO₂が極端に低下
- 酸素濃度が異常上昇(30%前後)
- 本格的な寒冷化・氷床拡大
後期の環境はすでに「やりすぎ」の領域。
④ 生物進化のフェーズが違う
前期:移行期
- 両生類が増加
- 陸上生活はまだ水辺依存
- 昆虫は存在するが小型
後期:完成期
- 羊膜卵を持つ爬虫類が登場
- 完全な陸上生活が成立
- 巨大昆虫が出現
後期に「陸上生態系の基本設計」が完成する。
⑤ 地質学的にも「別物」
前期
- 安定した浅海堆積
- 石灰岩中心
- 海水準変動は比較的小さい
後期
- 氷期による海水準の上下動が激しい
- 海退・海進の繰り返し
- 地層がモザイク状に複雑化
→ ペンシルベニア世の地層は**縞模様(サイクロセム)**が特徴
なぜここで前期・後期を分けるのか
変化が「連続」ではなく「質的転換」だから。
- 主役: 海 → 陸
- 炭素循環: 緩やか → 暴力的
- 生態系: 移行段階 → 完成・過剰最適化
前期と後期の境界は「石炭紀の本番開始点」。
超短縮まとめ
| 観点 | 前期石炭紀 | 後期石炭紀 |
|---|---|---|
| 主役 | 海 | 陸 |
| 石炭 | まだ少ない | 大量形成 |
| 気候 | 比較的安定 | 寒冷・高酸素 |
| 生物 | 移行期 | 陸上完成形 |
| 意味 | 準備段階 | やりすぎ段階 |
🧭 まとめ
- 石炭紀は「植物が地球環境を支配した時代」
- 石炭の形成は偶然ではなく、生物進化と分解系未成熟の必然
- CO₂低下・酸素上昇・寒冷化という地球規模の環境転換点
- その影響は後のペルム紀、さらには現代の化石燃料問題にまで続く
- ミシシッピ世(前期)は「海中心の石炭紀」
- ペンシルベニア世(後期)は「陸上生態系が暴走した石炭紀」
石炭紀は「過去」であると同時に、「現代文明の原点」でもある。