オルドビス紀 - カンブリア爆発の「その先」
🪨 はじめに
オルドビス紀(Ordovician)は、カンブリア紀の直後に続く地質時代で、約4億8580万年前から約4億4380万年前までの約4200万年間を指します。一見すると「カンブリア爆発の延長」に見えがちですが、地質学・古生物学の観点では明確に別の時代として区切る必然性があります。
🌋 オルドビス紀の基本像
🧭 時代的位置づけ
- 属する代:古生代
- 前:カンブリア紀
- 後:シルル紀
🌊 地球環境の特徴
- 大陸の多くは南半球に集中(ゴンドワナ大陸が巨大)
- 海洋面積が非常に大きい「海の時代」
- 温暖な気候から、末期に急激な寒冷化へ移行
🦠 生物進化の決定的な変化
🧬 カンブリア紀との最大の違い
カンブリア紀は「動物門の誕生」が最大の特徴でした。一方、オルドビス紀では次のような質的転換が起こります。
1️⃣ 生物の「多様化の仕方」が変わった
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カンブリア紀:
- 新しい体の基本設計(門・綱)が一気に登場
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オルドビス紀:
- 既存の設計を前提に、種・属レベルで爆発的に増加
この現象は GOBE(Great Ordovician Biodiversification Event) と呼ばれ、カンブリア爆発とは別物として扱われます。
GOBEは、現代の海洋生態系につながる「生物多様性の骨格」を作ったイベントと評価されています。
2️⃣ 生態系の「立体化」
- 底生生物(海底に張り付く生物)が急増
- 捕食者―被食者関係が高度化
- サンゴ礁の原型が形成され始める
→ 単なる生物の増加ではなく、生態系構造そのものが変化
🧊 オルドビス紀末の大量絶滅
❄️ カンブリア紀には存在しない「終末イベント」
オルドビス紀の最大の特徴のひとつが、末期に起こった大規模な大量絶滅です。
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原因:
- ゴンドワナ大陸の南極接近
- 大規模な氷河形成
- 海水準の急低下
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結果:
- 海洋生物の約85%が絶滅(推定)
この絶滅は「寒冷化」が直接原因となった、地質学的に非常に珍しいタイプの大量絶滅です。
👉 「誕生 → 繁栄 → 崩壊」までが1セットで観測できる これもオルドビス紀を独立させる大きな理由です。
🧱 地質学的な区切りとしての妥当性
🔍 層序(地層)で見た明確な違い
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カンブリア紀末とオルドビス紀初頭では:
- 示準化石が大きく変化
- 三葉虫群集の構成が一変
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国際層序委員会(ICS)は 生物相の連続ではなく、不連続を重視して区切りを設定
地質時代の区切りは「きれいな物語」ではなく、「地層と化石で再現できる不連続性」に基づきます。
🧠 なぜ「まとめてカンブリア紀」にしないのか
もしオルドビス紀をカンブリア紀の一部として扱うと:
- 生物進化のフェーズの違いが見えなくなる
- 生態系構築という重要な転換点が埋もれる
- 大量絶滅との因果関係が説明しづらくなる
👉 進化史の解像度が大きく落ちる
🧾 まとめ
- カンブリア紀: 動物の設計図が出そろった時代
- オルドビス紀: その設計図を使って、生態系が本格稼働し、多様化した時代
- さらに: 明確な大量絶滅で幕を閉じる
これらの理由から、オルドビス紀は 「カンブリア爆発の余韻」ではなく、 次のステージに進んだ独立した地質時代 として扱われています。