シルル紀 ― 大量絶滅の「後」を切り分けた理由がよくわかる時代
🧭 はじめに
シルル紀(Silurian)は、古生代の中でもやや影が薄く見られがちな時代ですが、**「オルドビス紀末の大量絶滅からの回復と再編」**という極めて重要な役割を担っています。 本記事では、なぜシルル紀がオルドビス紀から独立したのかという区分の理由を軸に、生物相・環境変化・地質学的意義を整理します。
🪨 シルル紀の基本情報
- 時代区分:古生代
- 期間:約4億4390万年前 ~ 約4億1930万年前
- 直前:オルドビス紀
- 直後:デボン紀
シルル紀という名称は、ウェールズ地方に住んでいた古代ケルト系部族「シルレス族(Silures)」に由来します。
🔪 なぜオルドビス紀と分けたのか(最重要ポイント)
① オルドビス紀末の大量絶滅が明確な「断絶」だった
オルドビス紀の末(約4億4400万年前)には、地球史上5大大量絶滅の一つが発生しました。
主な要因:
- ゴンドワナ大陸の南極付近への移動
- 大規模な氷河形成(寒冷化)
- 海水準の急激な低下 → 浅海生態系の崩壊
結果:
- 海洋生物の約85%が絶滅
- 特に三葉虫、腕足類、コケムシなどが大打撃
この絶滅は「ゆっくりした変化」ではなく、地質学的に見て明確な不連続面(化石群集の断絶)として記録されます。
② シルル紀は「回復フェーズ」として性格がまったく異なる
オルドビス紀が → 多様化と拡大の時代 だったのに対し、シルル紀は → 絶滅後の回復・再構築の時代
という性格を持ちます。
この「役割の違い」が、時代を分ける最大の理由です。
③ 地質学的にも区切りが明瞭
- 氷河期の終焉
- 海水準の再上昇(トランスグレッション)
- 堆積相の大きな変化
- 化石群集の総入れ替え
これらが世界各地で同期的に観測されるため、 「ここから新しい時代」と定義する合理性が非常に高い。
シルル紀の開始点(GSSP)は、化石(筆石)の出現を基準に国際的に厳密に定義されています。
🦠 シルル紀の生物相の特徴
🌊 海の中:回復と再編が進む
- **顎を持つ魚類(初期の有顎類)**が登場
- サンゴ礁が再び発達
- 腕足類・ウミユリ類が回復
- 三葉虫は生き残るが勢力は縮小
「魚の時代」と呼ばれるデボン紀の土台は、実はシルル紀で完成し始めています。
🌱 陸上:生命が本格的に上陸し始める
- 最古級の維管束植物(クックソニアなど)が登場
- 陸上にコケ状植物が定着
- 多足類・サソリ類など節足動物が陸へ進出
ただし、陸上生態系はまだ非常に単純で、森林や食物連鎖と呼べる段階ではありません。
🌡️ 環境の変化
- 寒冷な氷河期 → 温暖で安定した気候へ
- 海水準上昇により浅海が拡大
- 酸素濃度が上昇し、陸上進出を後押し
これにより、 「生命が海だけに閉じ込められていた時代」からの脱却が始まります。
🧠 シルル紀を独立させる意味(まとめ)
オルドビス紀とシルル紀を分けた理由を一言で言うなら:
大量絶滅という「破壊」と、その後の「再設計」を同じ時代に押し込めるのは無理だった
という点に尽きます。
| 観点 | オルドビス紀 | シルル紀 |
|---|---|---|
| 生物史 | 大規模多様化 | 回復と再編 |
| 終盤 | 大量絶滅 | 安定・拡張 |
| 陸上生命 | ほぼなし | 明確に出現 |
| 時代の役割 | 拡大 | 再構築 |
🧩 次につながる視点
シルル紀を理解すると、
- なぜデボン紀で「魚類と森林が爆発」するのか
- なぜ陸上生態系は一気に複雑化したのか
が非常にクリアになります。