2016–2017アメリカ音楽史 分断の時代と「再政治化」する音楽 - 怒りは戻ったが、90sとは別の形で
📝 はじめに
本記事では、2016〜2017年のアメリカ音楽史を、社会の分断とストリーミング成熟後の音楽表現の関係から整理する。この時代は、最適化され尽くしたポップ環境の中で、再び「怒り」「政治」「アイデンティティ」 が音楽に戻ってきた局面である。ただしそれは、90年代のような一枚岩の反抗ではなく、分断された社会の中で各陣営がそれぞれの言語で叫ぶ形を取った。
🌍 社会背景:分断が「可視化」されたアメリカ
🗳 2016年大統領選挙の衝撃
- トランプ当選による社会的断層の露呈
- 都市/地方、エリート/非エリート、リベラル/保守の分極化
- SNSによる情報バブルと対立の固定化
分断そのものは以前から存在していたが、2016年以降「互いに理解不能な他者」として可視化された。
✊ 社会運動の再燃
- Black Lives Matter の再拡大
- 警察暴力・人種差別・ジェンダー問題の表面化
- 若年層の「沈黙しない」態度
この時代の政治性は「統一的メッセージ」ではなく、「立場の表明」である。
📡 メディア環境:アルゴリズム×分断
🎧 ストリーミングの完全定着
- Spotify / Apple Music が完全インフラ化
- プレイリストは嗜好だけでなく思想的傾向も反映
- リスナーは「自分に近い声」だけを聴く
アルゴリズムは中立だが、結果としてエコーチェンバーを強化した。
🎚 技術背景:音楽が「声明」になる条件
🎛 制作・表現面
- 音質・構造の最適化は前提条件
- 重要なのは「何を言うか」「誰として言うか」
- ラップ/R&Bが最も適した表現手段として前景化
🎧 再生・共有
- アルバムは再び「文脈単位」として機能
- SNSでの引用・歌詞共有が意味を持つ
ストリーミング時代でも、「アルバム」という形式が思想表現として復権した。
🎶 代表的ジャンルとアーティスト
🎤 ヒップホップ:時代の中心へ
特徴:政治性、自己定義、社会批評
- Kendrick Lamar
- Chance the Rapper
- Run the Jewels
Kendrick Lamarはこの時代、事実上「アメリカの良心」の一部を担った。
🎧 R&B/ソウルの再政治化
特徴:個人的感情と社会構造の接続
- Solange
- D'Angelo
「静かな音楽」が、最も鋭い政治性を持つケースが増えた。
🎸 ロックの相対的後退
特徴:中心ジャンルからの脱落
- ロックは依然存在するが、時代の代弁者ではなくなる
- 怒りの表現手段としての優位性を失う
90s的な「ギター=反抗」という図式は、もはや機能しない。
🧠 この時代の本質(要約)
- 音楽は再び「政治的」になった
- ただしそれは分断された社会の部分最適な叫び
- ヒップホップが、名実ともにアメリカ音楽の中心に立つ
この分断構造が、次の時代に「音楽の断片化」を引き起こす。