1973–1975年 アメリカ音楽史 - ジャンル分化と「職人化」の完成
🎯 はじめに
本稿は、1973〜1975年のアメリカ音楽を、社会背景と音楽技術(楽器/録音/再生/放送/受信機)の進化に結びつけて整理する。 この時期の核心は、音楽が理念やムーブメントから切り離され、明確なジャンル境界と高度な専門性(職人化) を獲得した点にある。音楽は「何を言うか」以上に「どう作るか」が問われる産業へと定着した。
🌍 社会背景:理想後の現実適応
📉 政治と経済の冷却
- ベトナム戦争終結(1975) が見え始めるが、勝利感はなく、社会は消耗状態
- ウォーターゲート事件(1972–74) により政府不信が決定的に
- 第一次オイルショック(1973) でインフレと不況が同時進行
60年代的「理想を語る文化」は、この時期にはむしろ未熟と見なされるようになる。
🧑💼 成熟社会の価値観
- 若者文化は「反抗」よりも自己管理・技能・完成度を評価
- 音楽は職業としての安定性と市場適合性が重視される
- 大衆は「新しさ」より信頼できる様式美を求める
🎛 技術環境:スタジオ=工房の時代
🎚 録音・制作
- 24トラック録音が本格普及
- マルチマイク/分離録音/オーバーダビングが標準化
- ミキシングと編集が作品の完成度を左右
スタジオ技術の成熟が、演奏力・アレンジ力の差を可視化した。
🎹 楽器・機材
- フェンダー・ローズやクラビネットが常用化
- アナログ・シンセサイザー(Minimoog等) が実用段階へ
- ドラムはタイトで粒立ちの良い音像が主流
📻 再生・放送
- FMラジオはジャンル別編成へ
- LP(アルバム)単位の評価が定着
- 家庭用オーディオは「聴き比べる」文化を形成
🧱 ジャンル分化と代表的アーティスト
🎸 ハードロック/アリーナロック
- Led Zeppelin
- Aerosmith
- Lynyrd Skynyrd
特徴:
- 大音量・重厚サウンド
- ライブ会場の巨大化に適応
- 技術的完成度と身体性の両立
政治性は希薄化するが、これは逃避ではなく役割分担の結果。
🎹 プログレッシブ・ロック(技巧の極北)
- Pink Floyd
- Yes
- Emerson, Lake & Palmer
特徴:
- 長尺構成・コンセプト重視
- クラシック/電子音楽の導入
- スタジオ技術と作曲理論の結晶
『The Dark Side of the Moon』(1973)はスタジオ作品の到達点。
🕺 ファンク/洗練されたソウル
- Stevie Wonder
- Earth, Wind & Fire
- Parliament
特徴:
- リズムの精密化
- シンセとホーンの融合
- 社会性より音楽的快楽と完成度
ブラック・ミュージックはこの時期に技術的頂点を迎える。
🎶 カントリー/アメリカーナの再評価
- Willie Nelson
- The Eagles
特徴:
- 都市化への反動
- ルーツ音楽の洗練
- 後のAOR・80sポップへの橋渡し
🧩 1973–1975年の総括
- 音楽は完全に産業として成熟
- ジャンルは細分化され、横断性は低下
- 技術・演奏・制作すべてが専門職能として分離
- この完成度の高さが、次期の反動(パンク) を必然化する
この時代を「停滞」と見ると、なぜパンクが必要だったか理解できない。