🎧 アルゴリズムは音楽を「均質化」したのか、それとも「多様化」したのか - ストリーミング時代に起きた“直感と現実のズレ”
📝 はじめに
2010年代の音楽について語られるとき、しばしば 「どれも似た曲ばかりになった」「アルゴリズムのせいで均質化した」 と言われる。一方で、実際にはアーティスト数・ジャンル数は爆発的に増加している。 本記事では、この矛盾を解く鍵として、何が均質化され、何が多様化したのかを切り分けて整理する。
🌍 前提の整理:10年代は「音楽が最も増えた時代」
📈 数量的事実
- 楽曲リリース数は年々増加
- 個人制作・宅録・DIYアーティストが主流化
- ジャンル名・サブジャンルは細分化の一途
「音楽が減った」「選択肢が狭まった」は事実ではない。数だけ見れば真逆。
にもかかわらず、多くの人が「似た音楽ばかり」と感じる。 この感覚はどこから来るのか。
📊 均質化されたのは「ジャンル」ではなく「構造」
🧱 均質化①:曲の構造
ストリーミング時代に最適化された結果、以下が強く揃っていく。
- 曲の長さ(2〜3分台)
- 冒頭数秒でのフック
- サビ到達までの短縮
- テンポ帯・音圧・ダイナミクス
「似て聞こえる」の正体は、メロディより構造と手触りの一致にある。
🧠 均質化②:聴取状況への最適化
- イヤホン/スマホ前提
- 作業用・移動用・BGM用途
- スキップされないことが最優先
結果、 強すぎない・遅すぎない・邪魔しない音楽が増える。
🧩 一方で起きた「多様化」:ジャンルと語りの爆発
🌱 多様化①:ジャンルと表現主体
- トラップ、ローファイ、ベッドルームポップ、オルタナR&B…
- メインストリーム外からの流入が常態化
- 「誰が歌っていいか」の制約がほぼ消滅
90sや00sでは届かなかった声が、10sでは確実に可視化された。
🪪 多様化②:語られるテーマ
- メンタルヘルス
- ジェンダー・セクシュアリティ
- 移民・人種・家庭環境
- 成功と空虚さ
特にヒップホップ/R&Bでは、 個人的経験がそのまま社会批評になる構造が拡張された。
📡 なぜ「均質化した」と感じるのか:アルゴリズムの錯覚
🎧 プレイリストの性質
アルゴリズムは「全体」を提示しない。
- ユーザーの嗜好に近い曲を集中的に出す
- 安定した体験を優先
- 外れ値を減らす設計
アルゴリズムは世界を狭めたのではない。あなたの前に出す範囲を狭めただけ。
🪞 「多様化」と「体験の単調化」は同時に起きうる
- 社会全体:多様
- 個人の体験:均質
このねじれが、10年代最大の認知ギャップ。
🎶 具体例で見る「構造の均質化 × 表現の多様化」
🎤 ヒップホップ
- Drake
- Kendrick Lamar
→ 曲構造は近づくが、語っている世界は大きく異なる。
🎧 ポップ/ベッドルーム系
- Billie Eilish
- Clairo
→ 音量・質感は似ているが、人格・距離感は真逆。
10sは「音が似てきた」時代ではなく、「同じ器に違う中身を流し込んだ」時代。
🧠 結論:アルゴリズムは“音楽”を均質化していない
均質化したのは
- 構造
- 長さ
- 消費前提
多様化したのは
- 声
- 背景
- 語り
- 主体
10s音楽を「全部同じ」に聞こえると言い切るのは、構造だけを聴いて中身を見ていない状態。