クラウドサービスにおける責任分界モデルを理解する
🌐 はじめに
クラウドサービスは便利ですが、「どこまでをクラウド事業者が担い、どこからを利用者が担うのか」という責任の線引きが曖昧になりがちです。この線引きを「責任分界モデル(Shared Responsibility Model)」と呼びます。セキュリティ試験でも頻出のテーマであり、クラウドを正しく運用するうえで欠かせない概念です。
☁️ クラウドサービスの種類と責任範囲
クラウドには大きく分けて3つのサービス形態があり、責任の分担も変わります。
IaaS(Infrastructure as a Service)
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事業者が提供するもの:サーバ、ネットワーク、ストレージなどのインフラ
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利用者の責任:OS、ミドルウェア、アプリ、データの設定や管理
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例:Amazon EC2、Google Compute Engine
PaaS(Platform as a Service)
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事業者が提供するもの:OSやミドルウェアを含む実行基盤
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利用者の責任:アプリケーションとデータ
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例:Heroku、Google App Engine
SaaS(Software as a Service)
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事業者が提供するもの:アプリケーションまで含むすべて
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利用者の責任:利用者アカウントやデータの取り扱い
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例:Gmail、Microsoft 365
責任分界モデルは「事業者が何を提供し、利用者が何を守るべきか」を明確にする仕組みで、サービス形態ごとに異なる。
🔐 セキュリティの責任分界
セキュリティ面でよく問われるのが以下の領域です。
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クラウド事業者の責任
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物理的なデータセンターの安全管理
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ハードウェアの障害対応
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仮想化基盤のセキュリティ維持
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利用者の責任
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データ暗号化・バックアップ
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ユーザー認証・アクセス制御
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アプリケーションの脆弱性対策
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「クラウド事業者はクラウドの“中身”を守る、利用者はクラウドの“使い方”を守る」と整理すると覚えやすい。
🛠️ 実際のトラブル例
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SaaS利用者が弱いパスワードを設定 → アカウント乗っ取り(利用者責任)
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PaaS基盤で提供されたライブラリにゼロデイ脆弱性 → ベンダーが即時対応(事業者責任)
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IaaS環境でOSパッチを怠った → マルウェア感染(利用者責任)
「クラウドだから安全」と思い込むのは危険。責任範囲を誤解すると、セキュリティ事故の責任を問われるのは利用者自身になる。
📊 責任分界モデルを図で整理
(概念イメージ)
責任の多い ←────── 利用者責任 ──────→ 責任の少ない
IaaS PaaS SaaS
IaaSでは利用者の責任が大きく、SaaSでは小さい。ただしゼロにはならない点が重要。
✅ まとめ
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クラウドでは「責任分界モデル」を理解することが不可欠。
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IaaSは自由度が高い分、利用者責任が大きい。
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SaaSは便利だが、アカウント管理など最低限の責任は残る。
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「クラウド事業者は基盤を守る」「利用者は利用方法を守る」という整理が実務に役立つ。
試験や実務では「誰がどこまで責任を負うのか」を即答できるようにするのがポイント。