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クラウド利用を守る鍵:CASB(Cloud Access Security Broker)の役割と進化

🌐 はじめに

クラウドサービスの利用が企業や組織にとって当たり前となった現代では、利便性と同時にセキュリティリスクも増大しています。従来のオンプレミス型のセキュリティ対策ではカバーしきれない部分を補うために登場したのが CASB(Cloud Access Security Broker) です。この記事では、CASBの歴史、仕組み、機能、そして導入によるメリットをまとめます。


🏛️ CASB誕生の背景

クラウド普及前の状況

  • 企業は自社ネットワーク内部にサーバを置き、ファイアウォールやIPS/IDSで境界防御を行うのが基本。

  • 社員の業務はオフィス内のPCからアクセスする想定で設計されていた。

クラウド普及による課題

  • SaaS(Google Workspace、Microsoft 365、Salesforceなど)の利用拡大。

  • 社員が自宅や外出先から利用する「シャドーIT」の増加。

  • 境界型防御では「誰が・どこから・どんなデータにアクセスしているか」を十分に把握できない。

CASB登場

  • 2012年前後に市場が形成され始め、GartnerがCASBを主要カテゴリとして定義。

  • 「クラウドサービスと利用者の間に入り込み、セキュリティとガバナンスを実現する仲介者」というコンセプトで広まった。


⚙️ CASBの仕組みと導入方式

CASBは「利用者 ⇔ クラウドサービス」の通信の間に入り、可視化・制御・保護を行う。導入方式は大きく3つに分かれる。

1. プロキシ型(インライン)

  • 通信経路にCASBを配置し、リアルタイムで制御。

  • メリット:即時にポリシーを反映可能。

  • デメリット:遅延や複雑さが増すこともある。

2. API連携型(アウトオブバンド)

  • SaaSのAPIを通じて利用状況やデータを監視。

  • メリット:導入が容易で、後付けでも適用可能。

  • デメリット:リアルタイム性は弱い。

3. ハイブリッド型

  • プロキシとAPIを組み合わせて柔軟に対応。


🔒 CASBの主要機能

① 可視化

  • どのSaaSが利用されているかを検出(シャドーIT対策)。

  • 利用者・端末・データの動きをログ化。

② アクセス制御

  • 利用者属性や端末の状態に応じたアクセス制御(例:会社PCのみ許可、BYODは閲覧のみ)。

  • IPアドレス制限や多要素認証との連携。

③ データ保護

  • DLP(Data Loss Prevention)による機密情報の検知・ブロック。

  • 暗号化やトークナイゼーションの適用。

④ 脅威防御

  • マルウェアや不審な振る舞いの検知。

  • アカウント乗っ取りの兆候をAI/MLで解析。

⑤ ガバナンス・コンプライアンス対応

  • GDPR、HIPAA、個人情報保護法などの規制準拠をサポート。

  • 利用状況の監査ログを自動収集。


🚀 CASB導入によるメリット

  • セキュリティ強化:クラウド利用の「見えない部分」を補い、境界防御の限界を超える。

  • リスク低減:シャドーITやデータ流出の防止。

  • 運用効率化:一元的にSaaS利用状況を把握し、ポリシーを統一管理。

  • 法規制対応:コンプライアンス違反リスクを抑制。

クラウド移行を進める企業がCASBを導入することで「安心してクラウドを使える環境」が実現する。


🔮 今後の展望

  • **SASE(Secure Access Service Edge)**との統合が加速。

  • ゼロトラストアーキテクチャの一部としてCASBは標準化しつつある。

  • AIによる脅威検知の高度化、データ分類の自動化も進展。


📝 まとめ

CASBは「クラウド時代の境界防御の代替」ではなく「クラウドに適応した新しいセキュリティレイヤー」です。
可視化・制御・保護・ガバナンスという多面的な機能を持ち、ゼロトラストやSASEの一部として今後ますます重要になります。