🧭 V字モデルとA-SPICEの関係を構造で理解する
📝 はじめに
このページでは、V字モデルとA-SPICEがなぜ強く結びついて語られるのかを構造の観点から整理する。 V字モデルは「古い開発モデル」「ウォーターフォールの別名」のように誤解されがちだが、A-SPICEにおいては評価の思考軸そのものとして機能している。 ここでは、手法論ではなく、なぜこの視点が不可欠なのかを理解することを目的とする。
🔍 背景:V字モデルは開発手法ではない
V字モデルという言葉から、多くの人は次のようなイメージを持つ。
- 上から下へ順番に工程を流す
- 戻りが少ないことが理想
- アジャイルの対極
しかし、A-SPICE文脈におけるV字モデルは、工程順の話ではない。
V字モデルは「作り方」ではなく「対応関係のモデル」である。
A-SPICEが参照するV字モデルは、 **「何を決めたか」と「それをどう確かめるか」**の対応関係を示すための枠組みである。
🧱 左(定義)と右(検証)の対応関係
V字モデルの本質は、次の対応にある。
- 左側:要求・設計・定義
- 右側:検証・確認・妥当性評価
重要なのは、右側のテストが左側の何に対応しているかが明確であることである。
📐 対応が意味するもの
- システム要求 → システム検証
- ソフト要求 → ソフト検証
- アーキテクチャ → 結合テスト
- 詳細設計 → 単体テスト
これは「テストをたくさんやる」ための構造ではない。 テストの根拠を失わせないための構造である。
対応関係が説明できないテストは、偶然の成功に過ぎない。
🔗 トレーサビリティが必須になる構造的理由
A-SPICEでトレーサビリティが強く要求されるのは、 「管理が好きだから」でも「監査のため」でもない。
V字構造においては、
- 左で決めたことが
- 右で本当に確認されているか
を示す論理的な糸が必要になる。
🧵 トレーサビリティが切れると何が起きるか
- なぜこのテストをしているのか分からない
- 要求が満たされているか判断できない
- 変更影響が読めない
結果として、安全性・品質・説明責任が同時に崩れる。
V字構造があるのにトレーサビリティがない状態は、最も危険。
🧠 なぜアセスメントでV字視点が多用されるのか
アセッサーがV字視点を多用する理由は単純である。
- 左で何を決めたのか
- それを右でどう確かめたのか
- その対応を説明できるか
この3点を見るだけで、 プロセスが成立しているかどうかが一気に分かるからである。
V字視点は、プロセス健全性を一望できるレントゲンのようなもの。
❗ 実務で起きがちな誤解
🔄 「アジャイルだからV字は不要」
違う。 V字は工程順ではなく対応関係の話であり、アジャイルでも成立する。
🧪 「テストを増やせば右側はOK」
違う。 重要なのは数ではなく、左側との論理的接続である。
V字をウォーターフォールの象徴として嫌うと、A-SPICEの理解は止まる。
📌 まとめ:このページで伝えたい一点
V字モデルは、
「何を決め、その正しさをどう証明するか」 を一貫して考えるための構造である。
A-SPICEがV字視点を重視するのは、 プロセスが論理的に閉じているかを確認するためであり、 特定の開発手法を強制するためではない。
この構造を理解して初めて、 A-SPICEが「形式主義」ではなく 思考のフレームワークであることが見えてくる。