AIの歴史と進化 ~チューリングテストからChatGPTまで
🤖 チューリングの夢と「知性」の問い(1940年代)
第二次世界大戦中、イギリスの天才数学者アラン・チューリングは、ナチス・ドイツの暗号エニグマを解読するための電気機械「ボンブ」を開発した。このときの理論と技術が、のちのコンピュータとAIの出発点となる。
戦後の1950年、チューリングは論文「Computing Machinery and Intelligence」を発表。「機械は知能を持ちうるか?」という問いに対し、チューリングテストという方法を提案した。
📜 コラム:チューリングテストとは何か?
チューリングテストとは、「人間と機械がテキストだけで会話し、第三者がどちらが機械か判断できないならば、その機械には知性があると見なせる」という考え方。知性を「中身」ではなく「振る舞い」で評価するという発想は、現代のAI評価にも影響を与えている。
🧮 1956年:AIという言葉の誕生 ― ダートマス会議
1956年、アメリカ・ダートマス大学で開催された研究会で、ジョン・マッカーシーが初めて「Artificial Intelligence(人工知能)」という言葉を提案。ミンスキー、ニューウェルらとともに、「人間の知能のあらゆる側面を機械で模倣できる」と考えた。
このとき冷戦下のアメリカは、ソ連との技術競争に資金を注ぎ、AI研究も国防予算の対象となった。
🧠 第一次AIブーム(1950〜60年代)― 推論こそ知性!
この時期のAI研究は、論理記号を使った**記号処理(Symbolic AI)**が中心。
代表的な成果:
-
Logic Theorist(1955):世界初の定理証明プログラム
-
ELIZA(1966):精神科医を模した会話AI(ルールベース)
しかし、常識や曖昧さを処理できず、現実の複雑さに太刀打ちできなかった。
❄️ AIの冬(1970年代)― 限界が見え、資金も冷え込む
-
膨大なルール作成の限界
-
階段も上がれないロボット
-
文脈が理解できない自然言語処理
こうした限界により、DARPAなどの資金提供が打ち切られ、「AIの冬」に突入。
🧑⚖️ 第二次AIブーム(1980年代)― 専門家システムの時代
-
医療、法律、工場自動化など、特化領域でのExpert Systemが流行
-
MYCIN(感染症診断)、XCON(構成支援)などが一時的に成功
ただし、ルールの維持・更新コストが膨大で、次第に限界が露呈。
🎮 コラム:ゲームにも登場したAIの萌芽 ― ドラクエIVのAI戦闘
1990年に発売された『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』では、パーティの仲間がAIによって自律的に行動する戦闘システムが導入された。これは家庭用ゲーム機において初期の「AIらしさ」を感じられる体験の一つであり、特に「じゅもんをつかうな」などの戦術指示を通じて、プレイヤーとAIのインタラクションが生まれた。
このAIはもちろん現代のような学習型ではなく、プリセットされたルールベースだが、「自分で考えて動く仲間」というコンセプトは、多くのプレイヤーにAIへの関心を芽生えさせるきっかけとなった。
💾 1990年代:統計的手法とインターネットの台頭
-
インターネットの普及により大量のテキストデータが入手可能に
-
統計的自然言語処理(n-gramモデル、HMM)や、初期の機械学習手法(決定木、SVM)が主流に
この時代が、のちのAIの大飛躍の下地を作った。
🌊 2012年:ディープラーニング革命とAIの覚醒
トロント大学のAlexNetが画像認識コンテストImageNetで圧勝。CNN(畳み込みニューラルネットワーク)によるディープラーニングの威力が証明され、音声認識・翻訳・ゲームなど多分野でAIが台頭。
⚡ 2017年:Transformerの登場 ― 言語処理のパラダイムシフト
Googleが発表した論文「Attention is All You Need」により、Transformer構造が登場。
-
自己注意機構(Self-Attention)で長文の文脈を理解
-
並列処理が可能で高速学習
-
RNN/LSTMを不要にした
これが、のちのBERTやGPTに繋がる基盤となった。
🧬 GPTシリーズの進化:年とバージョンで見る歴史
年 | モデル | 特徴 |
---|---|---|
2018 | GPT (1) | 初代。Decoder中心。約1.1億パラメータ。BookCorpusで訓練。 |
2019 | GPT-2 | 15億パラメータ。多様なWebデータ使用。精度が高すぎ一部非公開から話題に。 |
2020 | GPT-3 | 1750億パラメータ。few-shot学習対応。API経由で商用利用拡大。 |
2022 | GPT-3.5 | ChatGPTに搭載。対話特化。従順で自然な会話が可能に。 |
2023 | GPT-4 | テキスト+画像対応のマルチモーダル。論理性と創造性が大幅向上。 |
2023末 | GPT-4-turbo | GPT-4と同等で高速・安価。最大128kトークンの長文処理も可能に。 |
2024–25 | GPT-4o | テキスト・画像・音声を統合したマルチモーダルモデル。人間に近い会話能力。 |
💬 ChatGPTの衝撃と革新(2022年~)
-
ChatGPT(GPT-3.5ベース)が一般公開され、世界的ブームに
-
プロンプトエンジニアリングという新たな職種が登場
-
教育、ライティング、プログラミング、法律、ビジネス支援など活用範囲が急拡大
ChatGPTは「専門知識がなくても使える初のAI」として、AIの民主化を象徴する存在となった。
🔮 今後の展望と論点
-
マルチモーダル化:音声・画像・映像の理解と生成の統合
-
自律型エージェント:目標を自動分解して達成するAI(Auto-GPT、Devinなど)
-
AIと法・倫理:フェイク生成、責任所在、バイアス、雇用影響
人類は今、AIとの新たな共存フェーズに足を踏み入れている。